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富山県砺波平野  屋敷林のある散居村を訪ねて

2016.05.17 |

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水を張った田んぼに屋敷林に囲まれた農家が平野の一面に点在する風景は緑に覆われた多くのコジマが大海原に浮かぶような姿にも見えます。
夕日を浴びて鏡の様に田んぼが反射し、より美しい表情を見せてくれます。

ここは、『高(土地)は売ってもカイニョは売るな』という言葉が昔から伝わる富山県の砺波平野。5月の連休を利用して行ってきました。
カイニョとは、屋敷林のこと。家の廻りに林をつくり家と共に大切にされてきました。

富山県砺波平野は、庄川や小矢部川が運ぶ土砂の堆積によって形成された豊かな水と肥沃な土に恵まれた扇状地であります。
開拓が進むにつれてどの家も周りの水田を耕作することができる稲作に便利な散居の形態をとる村が多くなり、更に、加賀藩は散村集落の形態と屋敷林の存在に理解を示し、散村の存続が拡大しました。

ここで、屋敷林についてふれてみます。
屋敷林のことを『カイニョ』などと言われ、近世文書では『垣根』ひらがなでは『かいね』と書かれ、田畑での境を言われることがあったそうです。散居村のカイニョは、もう少し広く解釈をし、「住居があって、その外側に耕作地があって、その間をルーズな地帯としての境界」と考え、そこに植栽された「垣根」カイニョとされていたそうです。
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家は冬の強い南西の季節風を避けて東向きに建てられていました。東側の前庭は農作業に使うため適当な空間を確保しながら庭木や果樹、花木を植え、柿の木は必ずあったそうです。
南と西側にはスギやアテなどに混ざって竹があり、林床にはヒサカキやアオキが自然に成育し、ドクダミやゲンノショウコ、オウレンなどの薬草も自然に生えていました。
スギは、冬の厳しい風雪から家を守り、暖かくなり、夏には強い日射しを遮り、涼しくなる。また、空気を浄化し、その殺菌作用により家の腐敗を防いでくれます。また、建材としても改築する時の材料となっていました。落ち葉はスンバと呼ばれ、掃き集め乾燥させ、焚き物とされていました。水田地帯では山が遠いので貴重とされていた。

竹は、湿気を吸ってくれ、スギなど違い1年で伸びきり、中は空洞で適当な間隔で節があり、軽くて弾力性があり強いので、農具や日用品などの材料とされていました。また、春にはタケノコを食べたり、竹馬、水鉄砲、竹トンボなど子どもの遊び道具もつくっていました。

ヒサカキなどは神棚にそなえ、柿は馬をつなぐことと秋には実がなりそれが子どものおやつとなっていました。

林床は植えたものや自然に侵入してくるものあり、ツワブキやユキノシタ、ドクダミ、ゲンノショウコ、オウレン、オオバコなど薬草として、ウド、フキ、セリ、タラノメ、ミョウガ、ヨモギ、ヨナメなどは季節の食膳をにぎわしました。

また、屋敷林は子ども達の絶好の遊び場でもありました。木登り、木に縄を掛けてブランコにしたり、かくれんぼ、昆虫採取、枝で、ちゃんばらごっこやおままごと。そして、落ち葉掃きは子どもの大切な仕事でした。家族との共同作業を通して家族としての絆が一層強められたりもしました。

このように人々の暮らしに屋敷林は欠かすことのできないものでありました。そのため屋敷林は大切に守られ、よほどのことがない限り伐られることはありませんでした。屋敷林そのものがその家の富と格別の象徴でもあったのです。

砺波平野の長い歴史と風土の中で生まれた屋敷林は、先人達が自然と共生をはかった知恵の結晶であります。また、様々な生物の生息場所とし自然生態系を維持しているだけでなく、温暖化防止なども担ってくれています。様々なことをもたらしてくれるものだと再認識し後世に残していかなければならないと思います。
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この、美しい風景は、先人達が造ってくれたものなのです。
富山県砺波平野の散居村のような風景は他の地域ではほとんど見られなくなった日本らしい農村の風景の一つだと思います。人がつくったものが、こんなにも美しく心の奥底にまでも訴え、癒してくれる力があります。
昔の人は自然に逆らわず自然に寄り添った開発や空間づくりをしてきたのです。人間都合を優先に考えていないことが結局は素晴らしい景色をつくることだと教えてくれているのです。

ある報告では、こんなこともあがっています。
「昭和40年代後半から各地で圃場整備事業が導入され、不整形な屋敷やあぜに囲まれていた川の改修、農道の整備などが行われた。用排水路はU字溝を敷設したり三方コンクリート造りとなった。これによって地下への浸透水が減り、遊水区域もなくなった。地下の水枯れからかつての屋敷林の主木であるスギの立ち枯れが急増したし、マダケの開花、そして枯死現象も起こった。」
これは、明らかに、土中の水と空気の流れを滞らせているからだと思います。地下には、人間の毛細血管のように水と空気を流す水脈が張り巡らされています。U字溝や三方コンクリート造りの水路では表面の水しか受け止められず、ましてやコンクリートによって地下の水の流れを留めてしまいどんどん環境悪化となってしまいます。自然を無視してつくる現代土木が環境を壊しているのです。これと合せて、屋敷林に住む人からは、屋敷林を育てていくには技術や労力不足、経費がかさむなどの悩みも多く、家の改築や庭の整備の度に年々姿を消してることが現状であります。
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このように新興住宅が増える地域もみられました。
このままでは、開墾が始まった500年前から続くこの風土、景色がなくなってしまいます。次世代につなぐために今の景色は先人達が造ってくれたものということをもう一度思い返しすことが大切でしょう。

話しは変わりますが、6月25、26日には全国各地で開催されている『大地の再生講座』を浜松天竜で開催します。
講座を開催するフィールドは天竜の山で、そこは、室町時代から続く集落で築200年は経っていると思われる古民家もある里山になります。ここも、先人達が自然と共に暮らしていた知恵がたくさん詰まった里山になります。
昔の人の自然と共にした暮らし方を感じながら、大地の再生の仕方を一緒に学びませんか?!詳細は追ってご連絡致します。

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