水脈

フライフィッシング 野呂川にて

南アルプスに位置し日本で2番目に高い山の北岳登山口の入り口の広河原野呂川にてキャンプをしながらフライフィッシングをしてきました。
今回は、マツヤマデザインさんが1週間その地でテントを張り、フライフィッシングをしたり本を読んだり山を登ったりのんびりしたりするという研修に僕は、1泊2日でご一緒させて頂きました。電波も届かなくマイカーは規制がかかって乗り入れができず、駐車場からバスや乗合タクシーで1時間程度かけて来る場所での1週間。そのためには、それ以前や以後の仕事の段取りや1週間分の食料の問題、そして、1週間四六時中スタッフと一緒に過ごすという色んな面で考えさせられる研修をするマツヤマデザインさんはすごいと感動させられます。
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広河原に付き橋を渡れば松山さんたちが待つテントがあります。
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昨年、初めてフライフィッシングをし、今回は2回目です。前回初めて釣れた時の感触が今でも思い出されます。今回は、思い切って自分の道具を1式揃え挑戦です。
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1日目は、午後からはじめ3匹ゲット。
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1匹目
IMG_98202匹目。まあまあはサイズでしょ?!
IMG_98273匹目。

フライフィッシングは、色んなスキルが必要とされますが、それだけでなく川の地形や水の流れ、それによって魚がどんなところを好んで獲物待っているのか、色々なことを考え想像しながら釣り上げる奥深い釣りなのです。まだまだ、思い通りのところにフライの投げ入れができなかったり、フライを自然に水の流れにのせられなかったり、魚が食いついても合わせられなかったり、ティッペトが絡んだりとまだまだなところがありますが、今回もなんとか釣れました〜!
遊んでいるようですが、フライフィッシングは結構、僕の仕事には勉強になるのです。川では陸と違う風が感じられたり、川幅が違えば水深も違う、石があればそこで深みができたり流れが緩やかになったり、急になったり、と、地形を作っているのは風や水の流れが基本なんだなと体で感じられます。水や石が作っている川の地形が読めなければイワナの居場所は分からず釣れないのです。
庭で流れを作る時の石の自然な配置もそうですが、水脈改善する場合の空気や水の流れの地形づくりなど、色んな面で鍛えられます。きっとまだ自分で気づいてないところもフライフィッシングを通して鍛えられるのだろうと思います。僕がイワナをたくさん釣れるようになった頃はもっと仕事面でも上達していることだと思います。そういう面では、遊びながら体で覚えることができるフライフィッシングって良い釣りだな~と思います。

2日目の朝方は、軽く山を散歩しました。
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北岳登山道の入り口付近です。天気もよく強い太陽の光を高木が和らげてくれて心地よい環境を作ってくれています。山にちょっと足を踏み入れただけで自然のエネルギーをもらえたような気にもなります。
IMG_9845見上げれば楓の葉っぱが広がっています。太陽と木々はなんて色彩感覚が豊かなのでしょうか。
IMG_9850光が豊かにあたるところは、下草も旺盛に生えてきます。大地の生気を感じられます。IMG_9870大地に降り注いだ雨や雪どけの水が山のずっと上の方から地表や地中を行ったりきたいりし、有機物に浄化されながら絶え間なく流れてきているのだと思います。この流れを止めた時は山が痛む時です。水の流れは地中に空気を送り込みながら山に力を与えいろんな動植物の居場所を作ってくれているのだと思います。
IMG_9878しばらく歩くとコンクリートの擁壁が見えてきました。砂防ダムです。砂防ダムは土砂災害のためにつくられています。
この写真をみてどう感じますでしょうか?川の向こう側の山が崩れていますが、その土砂をしっかりとこのダムが受け止めてくれている。機能しているだと思いますか?僕は、そうは思いません。このダムがあるから崩れてきたのではないかと。
水は、地表だけでなく地中にもたくさん流れています。このコンクリートの擁壁で地中の水の流れである水脈を閉ざしているのです。地中で水は一緒に空気も流してくいるのにこれでは、空気が通れません。そうすると大地は呼吸ができなく、呼吸をしたいがために土砂を流して呼吸をするのです。人もそうです。血管が詰まると死んでしまうように大地も水脈が詰まると苦しいのです。大地も生きているのです。
一見、山に入ると心地よく感じますが、間違いなく山は痛み始めています。地中でも空気が流れているのだという視点を持たなければ、人が住めない環境も増えてくるのではないかとも思います。人の考え方、視点を変えなければいけない時にきていると思います。

ちょっとした散歩を終え、師匠の松山さんとフライフィッシングに出ました。
IMG_9904松山さんは、あそこの石の配置や水の流れのスピードや水の表情などを見ながらイワナが居そうなところをレクチャーしながら一緒にまわってくれました。そんな時、僕の目の前で中々のサイズのイワナを釣り上げてくれました。
IMG_9915僕も、なんとか1匹釣れました。
これ今回は終了です。二日間で計4匹。自分としては満足です。
自分にとってもいい研修となりました。
IMG_9888癒される。心地いいな。と感じるのは、やっぱり自然の中に溢れています。それは、フライフィッシングをしてても山を散歩してても感じることができました。人のために開発されたものなどいいものはありますが、もっともっと自然に寄り添った生活の方が本当は幸せに心豊かになれるのだな。と思える二日間でした。
マツヤマデザインのみなさんありがとうございました。
感謝いたします。
マツヤマデザインさんのホームページはこちら

 

第二回 街路樹サミット in 大阪

すっかり今年も半年近くが経ち、もう梅雨の時期です。日々の生活に追われブログの更新もできませんでした。途中まで書いてた街路樹サミットについてやっと書いてみました。(汗)

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去年、東京都立川で開催された街路樹サミットが大阪で『第二回 街路樹サミット in 大阪』として開催されました。
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第一回目の時は一般参加者として登壇者の話を聞いていたあまがえる木下さんをはじめとする関西の造園仲間が、この街路樹サミットを関西でも開催しますと第一回目の最後にみんなの前で宣言していたことを思い出します。
総勢250名を超える方が全国から集まりました。街路樹について関心の高さとあの1回目の感動を関西はじめ全国に届けたいと1年間準備してきた実行委員の方々には敬服します。
第一回目と同様に秋田県の福岡徹さんと昨年1年間全国で大地の再生講座を開催して回られた矢野智徳さんの登壇など豪華な顔ぶれとなりました。

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福岡さんは、市長に木らしい姿にしませんか?!とお手紙を出したり、街路樹の最先端行政の東京都江戸川区まで行って勉強されたりと情熱を持って街路樹に向き合い行政に訴えてきたところに毎回感激させられます。造園家としてや時には市民の代表として立場を変えながら、ブツ切りされた街路樹を見ては自然樹形の剪定に訴え変え、担当者が変わるとまたぶつ切りされてしまう、その度にまた行政に訴えてとそれを繰り返し数十年やってきたそうです。その情熱はどこにあるのでしょうか。

街路樹のためにできることは、その価値に気付き、守り、活かすことだと言います。緑の価値は問題でもある。価値と一緒に問題も考え、気づいてもらえるように知ってもらえる機会を作り、守るための具体的方法を示し、活かせる方法を提案すればいい。こうしていけば少しずつ良くなっていく。と話してくれました。

また、ブツ切りはもちろんですが、左右対称に剪定するのではなく、そこの環境に適応した自然樹形の剪定が望ましく固定観念にとらわれない管理が望ましいと言います。山の環境では、崖や谷があったり周りに木々があったり様々な環境があります。その環境に適応しながら木々は生育していきます。それが自然樹形です。道路では周りにビルがあったり川があったり電柱、電線があったり公園や民地があったりします。街路樹も山のように周りの環境に合わせて管理していけば街路樹自身も健康に生育できるのでしょう。木が健康に育つことでそこを通る人々も心地よく感じるものだと思います。木が木らしく生き生きと生育していた方が、返って我々人間も過ごしやすくなるのではなかと思います。それに気づかず、木にストレスを与えるブツ切り剪定をしていればしばらくは落ち葉などのクレームが少なく済むだろう。と、安易な考えではいけませんね。そのためにも行政にはクレームを言うだけでなく、街路樹があることの感謝の気持ちを伝えたり、木を木らしく枝を伸ばしてほしいとの声えを届けなければなりませんね。
自分も綴っているだけでなく行動しなければなりませんね。。。

thumb_IMG_6010_1024京都府立大学大学院准教授農学博士の福井亘先生の話では、都市の緑地、街路樹が生き物とどのように関わっているのかというお話を聞けました。福井亘先生は、都市の中では鳥類が上位種であるので鳥を指標にし、研究されています。ある種の鳥がいれば、この下にどんな生き物がいるのかとみえてくるそうです。
街路樹は、都市に暮らす生き物の移動経路、動線になっていて、都市空間において点在する緑をつなぐ役割になっています。だから、生き物による街路樹の利用状況を把握する必要性があります。ぶつ切りの街路樹は見た目も悪いが生態系にとっても問題であることがわかります。また、樹種についても単一樹種でなくたくさんの樹種があったほうが鳥もたくさん集まってくるというデータも発表されました。
ここで、思い出されるのが、第一回目の街路樹サミットの話です。埼玉県の久喜市では、街路樹を道路の付属物としてでなく、自然環境の一部として捉えているという話です。だから、新規で街路樹を作る際には、一つの樹種でなく色々な樹種を混ぜながら街路樹を計画しているそうです。久喜市の取り組みが素晴らしいことがわかります。
また、浜松の街中の街路樹ではムクドリが夕方大量に発生します。そして、糞をし害鳥扱いをされています。きっとムクドリも街に緑が少なく寝場所がないのだと思います。それも、街に樹種が豊富で点在する緑地をつなぐ動線である街路樹がしっかりとあれば害鳥扱いされないで済むのだろうと感じます。
落ち葉の問題など人間都合で街路樹を管理するから居心地の悪い環境になっていると思います。動植物のためを思った管理をした方が結局は人にとっても過ごしやすい街になってくれるのではないでしょうか?!そんなことを考えてしまいました。
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最後のパネリストは杜の園芸の矢野智徳さんのお話です。矢野さんが街路樹についてどう考えているのだろうかとわくわくしていました。
まずは、いつものように4つの環境分類と8つの環境ファクターについての説明です。まずはどこに行っても大地があります。その大地には骨格を成している表層地質があります。その下には長い年月をかけて浸食したり風化したり堆積したりできる土壌があります。この二つが基本的なものでこれが形を成している大地の形を成している地形があります。
環境の元になっている大地環境には生物環境があります。いろんな動植物が生息していてその動植物とは違うちょっと異質な人間の生活相があります。
そして、次がポイントになってくる気象環境についてです。地上には空気と水が対流していく気象現象がありますが、大地の中にも気象現象があるということです。雨が降れば大地に水が浸透し、土の隙間に水だけでなく空気も通っていることです。今の住環境では大地の中の空気循環が滞っています。矢野さんは、全国の里山や住環境の土壌の中の水脈と言われる空気と水の通り道を改善して周られています。それは、矢野さんが現場作業を通して分かったと言います。土圧によって締め付けられていることで根の呼吸がし辛く苦しんでいる植物は、土の中で停滞している空気を抜いてあげれば大気圧によって押し出されるように水も抜けて、空気と水の流れが改善されれば植物も元気になってきます。地上にも地下にも気象環境があるということに気付いたことが矢野さんの大きな発見だと思います。
大地環境と生物環境と気象環境は、宇宙環境のエネルギーによって空気と水が対流し地球の自転や月の引力などのエネルギーの作用によって動き続けています。
thumb_IMG_6012_1024昔は、自然素材を使った住環境をつくっていて、地中にも空気と水が通るようになっていました。しかし、現代の住環境は川はコンクリートで三面張、住宅の基礎はコンクリートで作られ、道路はコンクリートやアスファルトで覆われている状況です。今の都市空間はコンクリートでふさがれた空間になってしまいました。その空間に空気と水の脈を通すとなると中々難しいが、可能性があるのは道路網だけ。表層数十センチはアスファルトや砕石で覆われているがその下にはまだ天然の大地が残っています。
道路網の中に空気と水が通る脈を持続可能にしていくには植物の力が必要であります。地上と地下で枝や根を張って空気と水の循環を保っていかないといけない。それを可能性としてくれるのが街路樹。人が通る道が同時に空気と水が通る動線の共有の道路網になれるのです。
今の街路樹は、道路の付属物としかされていない、もっと言うと厄介者扱いされているけど、都市空間の中で建物や人との関係を自然に繋げてくれているもので、街路樹こそが都市を救う環境改善のパートナーになり得るのです。空気と水の循環と人の住環境、生き物たちの環境、それを共存させてくれるのは身近な街路樹なのです。人と自然が共存し、空気と水の循環が保たれるには、街路樹の役割が本当に大切になってきます。

身近にある街路樹、その姿はほとんどがぶつ切りされ、木本来の姿とはほど遠くなってしまっています。それが当たり前のような姿になってしまった今、もう一度考え直すべきなのでしょう。と言いながら、中々自分も日々の生活に追われ何もできないでいます。。。木が木らしく伸び伸びと生育できる環境を作るには、人が理解を示さないといけないと思います。一見、落ち葉などない方が掃除もしなく楽で人間にとっては都合のいいように思えるかもしれません。それは、本当にそうだろうか。落ち葉があってもいいじゃないか。葉っぱは落ちるものだし、葉っぱも大切な資源の一部であります。
人の都合を考えた空間より動植物が暮らしやすい環境の方が結局は人も暮らしやすい環境になるのだと思います。これだけ環境が破壊された中ではむしろ、動植物の力を借りないといつかは人も住めない環境になってくるかもしれませんね。
そんなことを街路樹サミットに参加して感じました。

2017-06-11 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

大地の再生講座 in 浜松天竜 終えて・・・

とても濃い二日間となりました。
千葉の高田造園設計事務所さんのフィールドや関西での大地の再生講座に参加させていただき、この「杜の園芸」矢野智則さんの考えを地元の静岡浜松でも広めたいと思っていました。
そんな時、友人の天竜で木こりをやっている前田さんが自分で山を持ち、この山はこの先100年以上続くみんなに愛される山にしていきたいんだ。と聞き、では、矢野さんの考えを絶対この山でも取り入れるべき、と話したのがこの講座開催のきっかけでした。
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この二日間で延べ人数100名近くの人が参加され、多くの人が関心持ってくれたことに嬉しく思い、また、それに見事に応えてくれた矢野さんはじめ、杜の園芸のスタッフの皆さんには感謝致します。

途中、これは、大地の再生講座なのかそれとも僕ら人を再生してくれているのか分からなくなることもありました。(笑)それだけ、これから生きていく上で必要なことで、そして今までの考え方、自然との付き合いかたがおろそかだったものかと反省させられました。

何千、何万年続いてきた人と自然との関わりの貯蓄を東京オリンピックからこの50年で食いつぶしてきた。そして、大地は悲鳴を上げている。この矢野さんの言葉が印象的でした。

大地が悲鳴を上げているなんてそんなの分からないよ。って思う人もいるかもしれないですが、現に起こっているのです。
土砂崩れ、あれは、自然災害ですか?!
コンクリートで覆われた山は呼吸ができなく水も空気も滞っている状態です。自然を人工物で力で抑えつけるのは無理があると思います。自然は無理がかかればそれを自ら崩して安定しようとするのです。
今の流れを止めるのは困難で、現代の工法を完全否定するという訳ではなく、そこに有機物を加えた大地に空気と水を通る仕組みにしていけばいいのではないかと思います。

古民家周りの水脈を通して、谷からの涼しい心地よい風を感じ、ススキ畑では風の剪定をしまたそこでも心地よい風を感じることができました。自然は手をかけてあげればすぐ答えてくれました。
変わらなければいけないのは我々人間の方ですね。人間の考え方を転換しなければ、いずれ住めない環境になってしまうのでは・・・。子供たち次の世代はどんな社会になってしまうのか・・・。

やっぱりこれからは、有機物を主体とした有機物産業を確立していかないといけない。それは、ボランティアではなく経済的にも社会的にも評価されるように。
植物の力を借り、植物に応援してもらうような空間にしていかなければなりませんね。
では、自分に何ができるのか、土砂崩れの現場を修繕することもできません。
講座に参加しただけでなく、自分のフィールドに戻っても少しづつ実践していければと思います。ちょっとでも有機的な空間作りをはじめ、ミクロもマクロも相似性。という言葉を思い出し、その点から線へ面と連鎖してくれればと思います。

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写真は、木がちょっと調子悪かった自分のお客様のお庭の水脈改善の様子です。
ちょっとずつ、実践。実践。

秋には、第2回目も考えていますので、ご興味ある方は是非!

レポート①
レポート②
レポート③

2016-08-04 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

大地の再生講座 in 浜松天竜 レポート③

古民家周りの水脈整備が大体になったところで次は、地上の風通しもよくしていきます。下草や低潅木の風の剪定作業です。風が吹いた時に枝や葉っぱを削いでいくところで人が代行して枝葉を削いでいく作業になります。
風は立体的に縦にも横にも渦を巻いて入ってくるので、水平的に揃えるという人目線の概念は捨て、風にふらつく部分を削いでいくように作業を行います。目の視覚と手で感じる重みをうまく組み合わせながら道具を通して風を送るイメージで行います。
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水脈を整備し、植物の地上の風通しを良くすることで、植物の根と水の中に空気が程よく通り、地上の風通しと地下の空気の流れが連動しながら一体的な地上と地下の空気の流れのバランスが取れて生物が安定してくれる。生物が安定することは水脈が安定してくれることにつながり、大地の中も脈の機能を低下しないように生物を大事にするように脈を張り巡らせて作動してくる。
水脈と大地の環境も生物の環境も密接に繋がり見事に手綱を引きながら一体的な動きをしている。

この基本に習って、文字や数字で伝えることが中々できない体を通して息づく空間と対話しながらやっていく作業が大切であります。また、人の住環境作りも建物から庭から水脈から全て繋がっていくような空間作りが必要である。と話してくれました。

フィールドを畑エリアに移し、ここは、ススキ畑となっています。かつては、これを材料に屋根を葺いていたのでしょうか。
ここでは、もう16時過ぎ。それでも、矢野さんは丁寧に説明をし作業も進めてくれます。
参加者はここでも風の剪定をし地上の風通しを良くしていきます。子供もできる作業でみんな楽しく作業を進めます。
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風でなびくような位置で刈ってあげると、伸びようとする力が落ちる抑制ホルモンが働いて、荒根が萎縮し細根化して、根の構造が変わってくる。細根化されることで周りに空気が入ってきやすくなり呼吸が安定し、また、根から植物の体内に送られる水の圧力が抑えられるので伸びも大人しくなってくる。要するに樹体が風に対して安定するだけで植物の根の呼吸が安定します。周りとの関係も、風が通り、水や光も通りやすくなり、お互いそれらを求めて競い合う必要がなくなり、みんな落ち着いた生活シフトに入ってくることになります。
これを根こそぎ刈るような草刈りをすると、逆に成長ホルモンが働いてきます。根こそぎ刈ると植物は、全力をあげて元に戻ろうとします。
風の削ぎは、生きている生き物たちを大事に手なづけ、均等に光や水や空気が行き渡るような環境を提供してくれているのです。結果的に生き物たちに水脈が保たれるような相互扶助の関係になっているのです。風が通れば、地中の中の空気も通り、生き物たちも呼吸しやすくなってきます。
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矢野さんが重機で水脈の溝掘りを進めてくれたのを見て話してくれます。
それは、野山のイノシシが餌を食べに来て去っていった後の様子にも見えます。動物達は生活することで水脈を保全しくれているのです。動植物たちはこうやって自然と水脈との関係を築き上げてきています。だから、人間も本来はこれをやらなければならない。生活の糧としベースにしていくことで見渡す限りの自然の生態系環境の一躍を担うことができるです。これをさておき、自分たちの目に見える業(林業、農業、造園、建築、土木)に毎日のように勤しんで訳ですが、それを束ねてる作業が大地を保全する作業になっていかないといけない。
いつまでもこれが続くと思っていても、このわずか50年で大地が悲鳴をあげてきている。こんな時代は今までなかった。何万年と続いている人と自然との関わりの貯金をあっという間に食いつぶしてきてしまった。これを自分たちの業や生活と並行してやっていかないといけない。これが業や生活を支える土台となっている訳ですから、意識されていないことはおかしなこと。
これをボランティアでやるのではなくて、経済活動や社会活動にもきちんと位置づけされていかなければ自分たちも安心して生活できなくなり、ましてや次世代には引き継いでいけない。

では、草を抜くことでの影響は?と質問してみました。
草は何をやっているのか、草が生活することよって大地の中の空気や水の循環が保たれているという機能を担っているのだから、除草することによってそれが滞らない対策をしているのならまだいいけれど、手が掛けられなくなればなるほど、逆に草に環境改善の機能を委ねて、草を大事に管理し環境を改善してもらうべきである。
ましてやこれだけコンクリートなど無機的な空間作りになってきているのだから、土木の視点もコンクリートから木を導入して、植物たちに無機物に空気や水を通してもらう有機的な土木の視点に切り替わっていくべきである。人だけでこの50年の付けを返そうとしたら大変なことであり、だから植物たちの力を借り、有機物を主体とした有機的な空間作りをしていかないと追いついていかなくなってしまう。
草との向き合い方がその出発点となると話してくれました。

そして、山の方まで水脈をつなげ二日間の作業は終了となりました。
古民家に戻ってまとめです。

敷地全体が空気や水の通りが良くなり全体の環境が息づいてくると、人の体の健康や気持ち含め呼吸が良好になってくると思います。
環境改善をしてきて思わされるのは、自然の環境改善が結果的に人の環境改善に繋がってきている。それを大事に持続的に維持管理していく向き合い方、生活や業のあり方が備わってくると人の体も気持ちも健康的に変わってくるのではないかと思う。逆に塞がっていくと人も環境も目詰まりを起こして日常的に社会全体もおかしくなってくる。
小さな環境改善の手の入れ方ですが、大地の環境と生物の環境を大事に見ることで地上と地下の気象環境が変わってくる。これが自然界の鉄則であり基本的なこと。部分と全体をつなげた日常的な作業を大事に深めていけばずっと、自然と共に深まっていく。そういう生活や空間の姿を次の世代に引き継いでいくことが大切であります。この自然界のシステムを大事に日常的にみていって欲しい。
という、矢野さんの言葉で締めくくられました。

とても濃い二日間となりました。
千葉の高田造園設計事務所さんのフィールドや関西での大地の再生講座に参加させていただき、この「杜の園芸」矢野智則さんの考えを地元の静岡浜松でも広めたいと思っていました。
そんな時、友人の天竜で木こりをやっている前田さんが自分で山を持ち、この山はこの先100年以上続くみんなに愛される山にしていきたいんだ。と聞き、では、矢野さんの考えを絶対この山でも取り入れるべき、と話したのがこの講座開催のきっかけでした。

この二日間で延べ人数100名近くの人が参加され、多くの人が関心持ってくれたことに嬉しく思い、また、それに見事に応えてくれた矢野さんはじめ、杜の園芸のスタッフの皆さんには感謝致します。

途中、これは、大地の再生講座なのかそれとも僕ら人を再生してくれているのか分からなくなることもありました。(笑)それだけ、これから生きていく上で必要なことで、そして今までの考え方、自然との付き合いかたがおろそかだったものかと反省させられました。

何千、何万年続いてきた人と自然との関わりの貯蓄を東京オリンピックからこの50年で食いつぶしてきた。そして、大地は悲鳴を上げている。この矢野さんの言葉が印象的でした。

大地が悲鳴を上げているなんてそんなの分からないよ。って思う人もいるかもしれないですが、現に起こっているのです。
土砂崩れ、あれは、自然災害ですか?!
コンクリートで覆われた山は呼吸ができなく水も空気も滞っている状態です。自然を人工物で力で抑えつけるのは無理があると思います。自然は無理がかかればそれを自ら崩して安定しようとするのです。
今の流れを止めるのは困難で、現代の工法を完全否定するという訳ではなく、そこに有機物を加えた大地に空気と水を通る仕組みにしていけばいいのではないかと思います。

古民家周りの水脈を通して、谷からの涼しい心地よい風を感じ、ススキ畑では風の剪定をしまたそこでも心地よい風を感じることができました。自然は手をかけてあげればすぐ答えてくれました。
変わらなければいけないのは我々人間の方ですね。人間の考え方を転換しなければ、いずれ住めない環境になってしまうのでは・・・。子供たち次の世代はどんな社会になってしまうのか・・・。

やっぱりこれからは、有機物を主体とした有機物産業を確立していかないといけない。それは、ボランティアではなく経済的にも社会的にも評価されるように。
植物の力を借り、植物に応援してもらうような空間にしていかなければなりませんね。
では、自分に何ができるのか、土砂崩れの現場を修繕することもできません。
講座に参加しただけでなく、自分のフィールドに戻っても少しづつ実践していければと思います。ちょっとでも有機的な空間作りをはじめ、ミクロもマクロも相似性。という言葉を思い出し、その点から線へ面と連鎖してくれればと思います。

続く
レポート①
レポート②

2016-08-01 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

大地の再生講座 in 浜松天竜 レポート②

座学と周辺環境の矢野さんからの解説も終わり、午後からは、山を背負っている古民家周りを中心に水脈改善の作業です。

地上と地下は鏡のように映ると言います。地下の風通しが良ければ地上の風通しも良くなる。大気流が地形に沿って常にかかり、それが谷風として山から古民家周りに流れ、更に建物の隙間にも流れ込み、石垣から杉にも抜け、谷に抜けていく。それが一体的にバランス良く保たれていると建物も湿気が滞ることなく長持ちしてきます。石垣、杉なども健全な状態となってくる。そのバランスが崩れると古民家は痛み、石垣と一体となっていた杉の巨木も痛み、山の谷(水脈ライン)は泥や落ち葉の堆積で埋まり、機能を弱めています。
それが今の状態、何百年も続いていたここの環境はこの50年で痛んできてしまいました。

作業内容は古民家周りを中心に山から石垣へと抜ける谷ラインの地下の風通しのための水脈改善をしていきます。
矢野さんがブレーカー付きの重機で溝掘りをし、我々参加者はそのあと炭を入れ空気通しのパイプを埋設し、枝葉や竹などの有機物を戻していきます。
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住環境、里山全体の地上部から地下部の風通し、水通しなどの気象環境に伴うような環境づくりができるかどうかにかかっている。大地環境と生物環境と気象環境が、この敷地の中でうまく一体となって循環する生態系をつくるような形で人の住環境がつくられていくと、全体のバランスがとれる空間になってくる。
これがバラバラだとうまく機能しない。自然の生態系は地形に空気と水が通りながら水脈を作り、生物の環境が水脈を中心に広がって、水脈を守るように生活している世界であるから生き物たちが、日常的に安定して生活を持続できている。そのような空間作りが必要でありまた、それが水脈を保全することにも繋がってくる。

日夜動いているのは空気と水。この風と雨の動きがこの地球環境の中で大地の環境と生物の環境を作り出していて、地球環境をつくっている。風や雨などで自然に安定した自然の空間を人が壊してきた。そんなことをはじめたのは人間だけである。人が開発しても自然を痛めないで、水脈を痛めない環境作りがポイントであります。
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作った水脈は枝葉などの有機物で保護されパイプを中心に空洞化しているのでそこの隙間に向かって大気が空気を押し出すように動く、地下部の空気が動くとそれに伴って地上の空気も地下部に入って動き出します。また地下部に入った空気を埋める様に廻りから空気が向かってくる。そうすると谷間の空気が家廻りにも流れてきます。そうなると建物廻りの淀んでいた空気や湿気や嫌な臭いもなくなってくる。今日中に建物廻りの水脈を繋ぎ一晩寝かす事で翌日の空気の流れは一気に変わってくることでしょう。と一日が締めくくられました。

二日目、参加者より先に会場入りしましたが古民家の裏に廻ると谷間からの涼しく心地良い風を感じることができました。
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これが昨日、矢野さんが言っていた地下の空気が動くと地上の空気も動き出すということなのかと体感できました。それは、雨上がりの一日目と晴天の二日目の天候の問題なんじゃないの?!と疑う人もいましたが、でも、明らかに山から風が流れているのが体感できたのです。空気の流れが変わったのです。
矢野さんは何者なのか。空気も操れるのか?!ナウシカか(笑)とも思ってしまった。一日だけの参加の方にも感じて欲しかったところでもあります。

古民家の再生も建物本体だけをリフォームするのではなく、その周辺の空気の流れを改善することが大切だと思います。外回りの水脈改善をしながら建物の中にも空気を送り込み湿気などを吐き出しあげることで古民家は復活してくるのだと思います。

「焦らず、慌てず、ゆっくり、急ぐ」時間の制限がある中で急がなければならないこともあるけど、焦らないで慌てないで全体のバランスはゆっくりと見る。空気のような繫がりを持って作業を進めてほしい。という、矢野さんの言葉から二日目がスタートします。
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一日目の作業でパイプや枝葉を入れたところに埋め戻しの作業からになります。これも、ただ単に土を戻すという訳ではありません。
最後の表層の仕上げになるほどやさしいエネルギーで仕上げていくようにします。一年を通して雨風の動きがどのように環境を作っていくかを考える。強くエネルギーを掛けて土石流のような水の流れで地形を作ったことに対して、普段の雨風が仕上げをしていく細やかな日常的な雨風がしていくことを人が雨風になったつもりで、代行して仕上げていくようにします。
雨風がやっていることはムラがない。すべての空間に対してムラなくしている。それに習って雨風が少しずつ、波紋を広げながら均していくようにする。雨降って地固める姿は雨が通って空気や水が通りながら土圧と水圧で締めて安定させる。それに習って足で踏みながら水圧で押し込んでいるところに土砂を持っていくイメージで空気や水が抜けるところを残しつつ土を戻していきます。人が作業した埋め戻しはある程度ムラがあってもこの基本を守っていれば、本家本元の雨や風が修正してくれます。基本ができていないと雨や風がそれを壊して安定しようとしてくると言います。
基本が抑えられているかどうか確認しながら丁寧に気を掛けながら作業をする。時間も限りがあり、先を急がないといけないのだけど急ぐがあまり本質を忘れてはマイナスになることもある。「焦らず、慌てず、ゆっくり、急ぐ」この合言葉のような文句を思い出し全体のムラを調整しながら作業を進めていくようにします。
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気の動き一つでプラスでもマイナスにもなる。気を安定させれば持続もする。日常的に安定しながら気をかける訓練をすることが大切で、ここに住まいながら、日常気をかけて作業していけば、この空間は植物たちが応援してくれるようになってくる。
業者に頼めば力任せにしてしまう作業を悪くなったらみんなで気をつかう結い作業を行えば、気遣いと行動が繋がり心地よい空間が持続していくようになってくるといいます。

これは、大地の再生講座なのか、僕らの生き方を再生してくれているのか、分からなくなってきます。(笑)

レポート③に続きます。

レポート①はこちら

2016-07-26 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

大地の再生講座 in 浜松天竜 レポート①

6月25、26日、矢野智則さんを講師に迎え『大地の再生講座 in 浜松天竜』を開催させて頂きました。全国を飛び回る矢野さんはじめ杜の園芸のスタッフの皆さん、忙しい中ありがとうございました。感謝いたします。
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造園、林業、農業、土木、建築関係者や自然教室を運営している方やWEBデザイナーやプロダクトデザイナー、デスクワークの業種の方など幅広い分野の方々、二日間で述100名近く集まり、関心の高さがうかがえました。築200年は経つという古民家もなんとかもちました。(笑)
直前まで雨が降っていましたが、講座が始まると不思議と雨は止み、いよいよ講座開始になります。
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このフィールドはかつては里山整備が出来ていた場所ですが、現代土木の道路開発、川の整備、などと合わせてここに人が住まなくなり放置されて、全体的に空気が滞ってきている。それを水脈を中心に地上部と地下部の風通しを良くし、空気と水が良く通る環境整備をしていきたい。始めから自然を相手にやることを決めるのではなくて、そこの自然や時間に合わせて直接向かい合いながらその場で即興で作業を進めていきたい。という矢野さんの言葉から大地の再生講座がスタートしました。

まずは、座学。
4つの環境分類と8つの環境ファクターを元に環境を見ていくことができます。
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地球環境はどのような分類でみていけるかというと、どこにいっても大地がありその大地の環境は骨格を作っている表層地質があり、その下には長い年月をかけて浸食や風化したり堆積したりできる土壌がある。この二つが基本的なものでこれが形を成してその場所場所のオリジナルな大地の形を成している地形がある。

環境の元になっている大地環境に2番の(生物環境)色んな動植物が生息している。その動植物とはちょっと異質な生活をしている人の生活相がある。

そして、次が矢野さんの講座の中でのポイントになってくると思います。
『気象環境』
地上部の空気と水が対流していく気象現象は大地の中にもあるということ。
雨が浸透し、土の中の土壌間隙の隙間は水だけなく空気も通っている。土の中の水の動きは空気と一緒に動いているということです。

それは矢野さんが現場で造園作業を通してわかってきたと言います。
土圧によって締め付けられいることで根の呼吸がしづらく苦しんでいる植物は、土の中の停滞している空気を抜いてあげれば中に溜まっている水も大気圧によって押し出されるように抜けてくる。空気と水の流れが改善されれば植物の根も呼吸しやすく元気になってきます。
空気圧を抜けば溜まっている水も湧出してくる。そういうのを見ていて土の中にも空気と水の対流があるというのが具体的に見えてきたと言います。

それは、山の斜面と尾根と谷から湧出していくる水の関係を見た時、植物の根が大地の中に張り巡らさせていてその隙間を大気圧のかかった空気が動き、そしてそれを追っかけるように雨の水が土の中に浸透し地形の落差によって空気が動き水が動き、谷へ綺麗な水が押し出されていくる。
今、気象庁がやっているのは地上の空気と水の流れのことだけですが、地下の中にも明らかに空気と水が流れている。血管のような脈となってそれは水脈となって川に流れている。地上の気象環境があるように地下にも気象環境があると言っていいのです。

表層地質、土壌と地形との3つの関係で地下の空気と水の動きが変わり、この3つの相互作用は大きく大地の気象環境を左右してくる。
大地環境と気象環境とがうまく相互作用をもたらしながら有機的な水と空気の流れを生みだされているところに動植物が呼吸できるよな環境を作り出している。
地下と地上の空気と水の循環、対流、動きが動植物の生活を決定的に裏付けていると言います。

こういう視点3つの大きな環境分類が動き続けているのは宇宙環境のエネルギーによって空気と水が対流し、地球の自転、月の引力などのエネルギーの相互作用によって地球の大きな3つの環境が動き続けている。これはミクロもマクロも同じように相似形のように繰り広げている。これが環境という世界である。

この4つの環境分類と8つの環境ファクターを元に現場を一つ一つ、大事に紐解くことで見ていくことでその場所のオリジナルを見れるようになれると思うので、参考にして欲しいと話してくれました。

そして、現代の人の生活環境は、地下の空気と水の流れがあるということを考えていない空間作りとなってしまっています。
道路はアスファルトなどで覆われ、建物基礎や土留めはコンクリート、川や水路は三面張りのコンクリートになり空気と水が通りづらい環境となってしまっています。かつてはコンクリートの代わりに石や土、木をなどの有機的な材料を使って結果的には空気と水が通る環境であったと言います。ここ50年で日本の素晴らしい風土を食いつぶしてきた。このままでは環境が悪化し災害という現象も起こり、人が住めない環境になってしまい、子や孫の世代に引き継ぐことはできない。と話してくれました。

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次に、古民家周りの環境を矢野さんと一緒に見て回りました。
この古民家と里山のフィールドの象徴的なところの一つがこの樹齢500年の杉と石垣です。
石垣と植物の根で立体的な組み合わせで土圧を支え、浸透してきた水も分散させたりして敷地を安定してくれています。
植物の根が石垣を崩さないで安定させるには空気と水が程よく循環していないと保たれない。
空気と水の循環を人工地形の中にも取り込んであげれば、植物の根が喧嘩しないでうまく保全し続けてくれる。
セメントを使わなくても土の中に空気と水が動く視点や技術があれば、何百年も保つことができる。それがここで証明してくれています。
先人の人たちの知恵はすごいものです。これは、日常の作業を通して何百年も伝えられた技術なのでしょう。

レポート②に続く

2016-07-22 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

富山県砺波平野  屋敷林のある散居村を訪ねて

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水を張った田んぼに屋敷林に囲まれた農家が平野の一面に点在する風景は緑に覆われた多くのコジマが大海原に浮かぶような姿にも見えます。
夕日を浴びて鏡の様に田んぼが反射し、より美しい表情を見せてくれます。

ここは、『高(土地)は売ってもカイニョは売るな』という言葉が昔から伝わる富山県の砺波平野。5月の連休を利用して行ってきました。
カイニョとは、屋敷林のこと。家の廻りに林をつくり家と共に大切にされてきました。

富山県砺波平野は、庄川や小矢部川が運ぶ土砂の堆積によって形成された豊かな水と肥沃な土に恵まれた扇状地であります。
開拓が進むにつれてどの家も周りの水田を耕作することができる稲作に便利な散居の形態をとる村が多くなり、更に、加賀藩は散村集落の形態と屋敷林の存在に理解を示し、散村の存続が拡大しました。

ここで、屋敷林についてふれてみます。
屋敷林のことを『カイニョ』などと言われ、近世文書では『垣根』ひらがなでは『かいね』と書かれ、田畑での境を言われることがあったそうです。散居村のカイニョは、もう少し広く解釈をし、「住居があって、その外側に耕作地があって、その間をルーズな地帯としての境界」と考え、そこに植栽された「垣根」カイニョとされていたそうです。
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家は冬の強い南西の季節風を避けて東向きに建てられていました。東側の前庭は農作業に使うため適当な空間を確保しながら庭木や果樹、花木を植え、柿の木は必ずあったそうです。
南と西側にはスギやアテなどに混ざって竹があり、林床にはヒサカキやアオキが自然に成育し、ドクダミやゲンノショウコ、オウレンなどの薬草も自然に生えていました。
スギは、冬の厳しい風雪から家を守り、暖かくなり、夏には強い日射しを遮り、涼しくなる。また、空気を浄化し、その殺菌作用により家の腐敗を防いでくれます。また、建材としても改築する時の材料となっていました。落ち葉はスンバと呼ばれ、掃き集め乾燥させ、焚き物とされていました。水田地帯では山が遠いので貴重とされていた。

竹は、湿気を吸ってくれ、スギなど違い1年で伸びきり、中は空洞で適当な間隔で節があり、軽くて弾力性があり強いので、農具や日用品などの材料とされていました。また、春にはタケノコを食べたり、竹馬、水鉄砲、竹トンボなど子どもの遊び道具もつくっていました。

ヒサカキなどは神棚にそなえ、柿は馬をつなぐことと秋には実がなりそれが子どものおやつとなっていました。

林床は植えたものや自然に侵入してくるものあり、ツワブキやユキノシタ、ドクダミ、ゲンノショウコ、オウレン、オオバコなど薬草として、ウド、フキ、セリ、タラノメ、ミョウガ、ヨモギ、ヨナメなどは季節の食膳をにぎわしました。

また、屋敷林は子ども達の絶好の遊び場でもありました。木登り、木に縄を掛けてブランコにしたり、かくれんぼ、昆虫採取、枝で、ちゃんばらごっこやおままごと。そして、落ち葉掃きは子どもの大切な仕事でした。家族との共同作業を通して家族としての絆が一層強められたりもしました。

このように人々の暮らしに屋敷林は欠かすことのできないものでありました。そのため屋敷林は大切に守られ、よほどのことがない限り伐られることはありませんでした。屋敷林そのものがその家の富と格別の象徴でもあったのです。

砺波平野の長い歴史と風土の中で生まれた屋敷林は、先人達が自然と共生をはかった知恵の結晶であります。また、様々な生物の生息場所とし自然生態系を維持しているだけでなく、温暖化防止なども担ってくれています。様々なことをもたらしてくれるものだと再認識し後世に残していかなければならないと思います。
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この、美しい風景は、先人達が造ってくれたものなのです。
富山県砺波平野の散居村のような風景は他の地域ではほとんど見られなくなった日本らしい農村の風景の一つだと思います。人がつくったものが、こんなにも美しく心の奥底にまでも訴え、癒してくれる力があります。
昔の人は自然に逆らわず自然に寄り添った開発や空間づくりをしてきたのです。人間都合を優先に考えていないことが結局は素晴らしい景色をつくることだと教えてくれているのです。

ある報告では、こんなこともあがっています。
「昭和40年代後半から各地で圃場整備事業が導入され、不整形な屋敷やあぜに囲まれていた川の改修、農道の整備などが行われた。用排水路はU字溝を敷設したり三方コンクリート造りとなった。これによって地下への浸透水が減り、遊水区域もなくなった。地下の水枯れからかつての屋敷林の主木であるスギの立ち枯れが急増したし、マダケの開花、そして枯死現象も起こった。」
これは、明らかに、土中の水と空気の流れを滞らせているからだと思います。地下には、人間の毛細血管のように水と空気を流す水脈が張り巡らされています。U字溝や三方コンクリート造りの水路では表面の水しか受け止められず、ましてやコンクリートによって地下の水の流れを留めてしまいどんどん環境悪化となってしまいます。自然を無視してつくる現代土木が環境を壊しているのです。これと合せて、屋敷林に住む人からは、屋敷林を育てていくには技術や労力不足、経費がかさむなどの悩みも多く、家の改築や庭の整備の度に年々姿を消してることが現状であります。
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このように新興住宅が増える地域もみられました。
このままでは、開墾が始まった500年前から続くこの風土、景色がなくなってしまいます。次世代につなぐために今の景色は先人達が造ってくれたものということをもう一度思い返しすことが大切でしょう。

話しは変わりますが、6月25、26日には全国各地で開催されている『大地の再生講座』を浜松天竜で開催します。
講座を開催するフィールドは天竜の山で、そこは、室町時代から続く集落で築200年は経っていると思われる古民家もある里山になります。ここも、先人達が自然と共に暮らしていた知恵がたくさん詰まった里山になります。
昔の人の自然と共にした暮らし方を感じながら、大地の再生の仕方を一緒に学びませんか?!詳細は追ってご連絡致します。

2016-05-17 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

『大地の再生講座 結の杜づくり』 in 浜松天竜  開催に向けて

ぼくは、今、『雑木の庭』という切り口で庭作りを通して心地良い空間や住まいの提案ができればと思って仕事をさせて頂いております。
その為にはまずは木が健康に育ってくれることが大切だと思っております。木が健康に育ってくれれば自然と我々人にも心地良い環境を与えてくれるものだからです。
では、木が健康に育つためには・・・と考えると自然に学ぶことが一番。心地良いと感じる山、落葉高木が優先の二次林の山はどんな植生をしているのかなど、なるべく作り過ぎずに自然の山に近づけることが大切だと思います。

自然の山のように高木、中木、低木と階層的に植付け、樹種も習って選定したりと心掛け、そして土壌改良もしっかりとして植栽するのですが、それでも樹々が痛んだり場合には枯れることもありました。
千葉の高田造園設計事務所の高田さんとのご縁もあり矢野智徳さんの『大地の再生講座』に出席させて頂いたことがありました。それは、衝撃的で目から鱗の話しばかりでした。そこにはとても大事で見逃していた点があったのです。『大地の水脈』という視点です。高田造園設計事務所さんのフィールドでの大地の再生講座の様子

人間には血を流す血管というのがあります。大地には水を流す水脈というのがあります。人間の体内は6割程度水分と言われている中、大地にも人間の毛細血管のような水脈が張り巡らされています。目に見える川としての水はほんの極わずか。水は表面に出たり大地の中に入ったり、水脈を通して行ったり来たりしているのです。
人間は血管が詰まると死んでしまいます。大地も水脈が詰まると死んでしまうのです。
水脈の水の流れは空気と表裏一体で動いています。ペットボトルの水が外に出るのと同時にペットボトルの中には空気が入ります。水脈が詰まるということは水が滞り、空気も滞ってしまいます。空気が無ければ酸欠状態になり土はグライ層になり有機ガスを発生してしまいます。そんなところには微生物や小動物は住めなくなり、ましてや植物の根は伸びることができません。根が伸ばせられないということは樹々は痛んできてしまいます。木が健康には育つことができないのです。
その視点が欠けていました。いくら土壌改良をしたり肥沃な土を入れても土は硬くしまってしまうことがあります。大切なのは土中の水と空気の流れということです。水脈の視点がとても大切なのです。

それに対して現代土木は人間都合によって道路はコンクリートやアスファルトで覆われ、土留めはコンクリートになり、川や水路はコンクリートの3面張りになり、大地は呼吸が難しく、コンクリートによって水脈は遮断されてしまっています。かつての住まいは土や石や木などの有機的は材料で空間作りが行われていました。土の中は空気と水が通るようになっていたのです。土木という字を見ても土と木です。本来は有機的な材料を使いながら作るのが土木だったのではないでしょうか?!矢野さんはこんなことも言っていました。『このまま大地の状態を放置していけば色んな形で社会に影響を及ぼす。例えば0157のような生物的なマイナスが起こったり、災害的に大地の環境が悲鳴を上げてくるか。もしくは、人間達がつくりだす社会のシステムに異変をおこして、戦争とか経済恐慌とかが起こってくるかもしれない。
いずれにしても何らかの引き金で人が住めない社会になってくる。』

そんな矢野さんの話しを浜松のみんなにも聞いて欲しい。浜松の大地環境を改善してほしいと思い、動きました。
そして、先日、浜松での『大地の再生講座 結の杜づくり』開催に向けて、矢野さんに浜松の天竜の山を視察して頂きました。
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フィールドは天竜の山できこりをしている前田剛志さんの山です。前田さんは「TEDxHamamatsu」に出演されています。こちらをご覧下さい。
ここは、室町時代から続く集の中で築200年は経っているのではないかと言われる古民家もあります。天竜の山は9割杉、ヒノキの人工林という中でここは広葉樹も少し残っている里山になります。樹齢500年と言われる杉もあり先人たちは木と共に暮らしていたことがわかる学びには格好の場であると矢野さんからのお言葉も頂きました。
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しかし、そんな山も東京オリンピックからの高度成長の50年間で大地は痛め付けられ悲鳴をあげていると言います。
山のある部分は、道路の部分でコンクリートで止めたが為に深層崩壊を起こしてくる、1時間100mm越える集中豪雨が続けば土砂崩れがおこる可能性も考えられると言います。
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水と空気を抜いてあげないといけない。
今は、根の深い木が支えてくれている。
しかし、そんな木も涙を流す様に幹割れして汁をだしている。これは、根の呼吸力が落ちているから。
幹に水があがっていたところが上げきれなくなってひび割れをおこしている。これを自分で修復しようとして油を出している。(これが涙のように見えます。)でも、これが効かなくなった時、割れてそこから虫が入ってきて枯れたり倒れたりしてくる。どんどん、山が崩壊に向かってしまいます。

大地は苦しんでいます。先人の自然と共存する生き方を学び手遅れになる前にみんなで大地の再生しましょう。それは、移植ゴテ(小さいスコップ)からできるのです。女性でも子供でも。
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講座の日程など詳細が決まりましたらご連絡致します。

最後に矢野さんからのメッセージになります。

~「大地の再生講座 結の杜づくり」に向けて~

日本の各地で、
傷んできた大地の再生講座をひらかせてもらうようになり、
大地の再生は、関わる四者の結い作業(協働作業)によって
成り立ってゆくものだと 改めて思うようになりました。

一. 杜の園芸
二. 講座の参加者
三. 講座で関わる地域(人社会)
四. 講座で関わる自然(生き物社会)

杜の園芸と参加者の方だけのギブ&テイクでは終わらない。
その学びと改善の余波は、直接流域におよび、
その場とその周囲に影響し合う責任を
問われてゆくことになるでしょう。
 

“結の杜づくり”
それは、まるで おまつりのおみこし担ぎのよう。

−− 誰かがつかれたら誰かが入れ替わり、
力のある人・ない人 それぞれに力の流れをつむいで
おみこしは進んでゆく。

命の作業は、
あわてず、あせらず… でもゆっくり急げ。

人だけが楽しむのではなく、
みなが力を出し合う、ささやかな結い作業によって
命はつながってゆく。 −−

それは、小さな動きから大きな動きまでが連鎖してゆく
自然の生態系の動き・流れそのものに重なります。
 

そもそも「杜」の語源とは、

−− 人が森の神に誓って
「この場を、傷めず、穢さず、大事に使わせてください」
と祈りを捧げて、ひも(紐)張って囲った場、を意味する和語 −−

と、ある本に記されていました。

 
この大地の再生講座(学び)が
願いや想いだけにとどまらず、具体的な
大地の要である水脈機能(大地の空氣と水の循環)を回復するための、
人と自然との協働作業(結)として
一歩一歩つむがれてゆくことを願い、
今年もスタートしていきたいと思います。

 
杜の園芸 矢野智徳

呼吸をしている限りは、まだ間に合う。大地の再生

風土を再生する〜里山整備の視点
 (京都の神木クスノキの樹勢回復・環境改善工事の変化が
 わかりやすい写真が掲載されていますので 是非ご覧ください。) 

2016-04-20 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

天竜の山で

天竜の山で木こりをやっている友人が山を借りたというので、大工さんとデザイナーさんと一緒に天竜の山に行ってきました。
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木こりの友人は、『山を借りたら古民家もついてきた。』と話し、その古民家は築100年程らしいです。外観は見てもすぐ分かる位傾きはひどく修繕は大変かなと思わせる位の状態ですが、中を見ると建具の状態はとても良く、住む状態まで持っていくことは難しいかもしれないけど人が集まれる程度ならなんとかなるかなという感じでした。
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向かって右側には納屋と馬小屋で使用していた小屋が残っています。
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軒の水平ラインが美しく建築の納まり的にも面白いと大工の友人は言います。
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ここら辺の集落は室町時代から続くみたいで、この場所も室町時代から建て替えて住まわれた場所だそうです。西側へ廻ると室町時代からとまでは言わないが古い時代につくられたであろう石垣が残っています。そこには生垣で使われていたのでは無いかと思われるマキの木が巨木化して生息しています。
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調べてもらった杉の木は樹齢500年らしいです。
ここでも水脈の話しが頭をよぎります。空積みで積んだ石積みと地形高低差があるところでは水脈が健全で水と空気の流れが豊かなのでしょう。この環境では樹々は根を伸ばし大木になることがでるのでしょう。
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そしてこちらの木は中は空洞化でも幹内部から不定根という根を地面までおろし地中から養分を吸って未だ生きています。
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幹内部は空洞化になってしまい弱くなってしまったが幹の端を巻き込み倒れないように自ら形を変えがんばっています。木の生命力は凄いです。感動させられます。
犯罪が多くなってきた世の中、命の学習は中々家庭でも学校でも教育は難しいです。こういう自然環境の中で学ぶものなのかもしれません。この山を子供達が命の学習をできる学びの山になってもいいかもしれませんね。
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建物の南側は開けていてそこからは晴れていれば遠州灘が見えるそうです。
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建物の奥が借りた山。山手前には大人二人では手が廻らない程の楠が見えます。その奥は杉やヒノキの人工林、更に奥に行けば、広葉樹が残っています。
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大木の楠まで行って、今日はここまで。3時間程、木のこと、山のこと、土のこと、古民家のこと、水脈のこと(笑)などなど、話しは尽きません。持ち主でない僕もなんだかワクワクしてきました。この山をこれからどうしていくか、もっともっと一般の人でも魅力的や山にしていくか、ぼくも微力ながら協力させて頂きたいと思います。

2015-07-12 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

日光東照宮 世界一の杉並木

深岩石の採掘場の見学し車を走らせ日光東照宮へ向かいました。道中、総延長35.41キロメートもあると言われる世界一の杉並木を通ります。
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近年では樹勢が衰え修繕工事がされているそうですが、400年も生息し続けていることに感動します。これも、植栽時に水脈のことなど考え地形に高低差をつけるように植樹したからでしょうか。そんなことを考えてしまいます。あたり前のこととして昔の人は水や空気の流れを考えて施工していたのでしょう。昨日、今日と千葉の高田造園設計事務所さんのフィールドで行われた『大地の再生講座』で矢野智徳さんの言葉を思い出します。(高田造園設計事務所さんのフィールドで開催された矢野智徳さんによる大地の再生講座についてはまた後日ふれたいと思います。)
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境内は杉の大木に圧倒されます。
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石積みと共存する杉の大木を見ては、コンクリートで土留めをする現代土木と比較して明らかに写真の方が良いと感じます。
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石にコケがのり周囲の緑と調和した景観はコンクリートには出せません。水や空気の通り道ができるのも石積みの利点だと思います。また、杉の根が張ってもびくともしない石、しっかりとした技術を持てば石積みと樹木は共存できることが分かります。強度的にもコンクリートより優れているのではないかと感じさせてくれます。
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中へ進みます。
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「見ざる、言わざる、聞かざる」で有名な三猿
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「眠り猫」
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家康の墓へと向かいます。整備された切り石の土留めと舗装、杉並木には神秘さを感じます。
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家康の墓所、「奥社宝塔」
その他、境内内は現在、平成の大修理中でした。

5月に行う浜松城近くのホテルでお茶会を行いますが、その席では席主代理を勤めさせて頂きます。家康のお墓もお参りできたのでうまくこなせるかな。(笑)

2015-05-14 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

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