2016-07

大地の再生講座 in 浜松天竜 レポート②

座学と周辺環境の矢野さんからの解説も終わり、午後からは、山を背負っている古民家周りを中心に水脈改善の作業です。

地上と地下は鏡のように映ると言います。地下の風通しが良ければ地上の風通しも良くなる。大気流が地形に沿って常にかかり、それが谷風として山から古民家周りに流れ、更に建物の隙間にも流れ込み、石垣から杉にも抜け、谷に抜けていく。それが一体的にバランス良く保たれていると建物も湿気が滞ることなく長持ちしてきます。石垣、杉なども健全な状態となってくる。そのバランスが崩れると古民家は痛み、石垣と一体となっていた杉の巨木も痛み、山の谷(水脈ライン)は泥や落ち葉の堆積で埋まり、機能を弱めています。
それが今の状態、何百年も続いていたここの環境はこの50年で痛んできてしまいました。

作業内容は古民家周りを中心に山から石垣へと抜ける谷ラインの地下の風通しのための水脈改善をしていきます。
矢野さんがブレーカー付きの重機で溝掘りをし、我々参加者はそのあと炭を入れ空気通しのパイプを埋設し、枝葉や竹などの有機物を戻していきます。
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住環境、里山全体の地上部から地下部の風通し、水通しなどの気象環境に伴うような環境づくりができるかどうかにかかっている。大地環境と生物環境と気象環境が、この敷地の中でうまく一体となって循環する生態系をつくるような形で人の住環境がつくられていくと、全体のバランスがとれる空間になってくる。
これがバラバラだとうまく機能しない。自然の生態系は地形に空気と水が通りながら水脈を作り、生物の環境が水脈を中心に広がって、水脈を守るように生活している世界であるから生き物たちが、日常的に安定して生活を持続できている。そのような空間作りが必要でありまた、それが水脈を保全することにも繋がってくる。

日夜動いているのは空気と水。この風と雨の動きがこの地球環境の中で大地の環境と生物の環境を作り出していて、地球環境をつくっている。風や雨などで自然に安定した自然の空間を人が壊してきた。そんなことをはじめたのは人間だけである。人が開発しても自然を痛めないで、水脈を痛めない環境作りがポイントであります。
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作った水脈は枝葉などの有機物で保護されパイプを中心に空洞化しているのでそこの隙間に向かって大気が空気を押し出すように動く、地下部の空気が動くとそれに伴って地上の空気も地下部に入って動き出します。また地下部に入った空気を埋める様に廻りから空気が向かってくる。そうすると谷間の空気が家廻りにも流れてきます。そうなると建物廻りの淀んでいた空気や湿気や嫌な臭いもなくなってくる。今日中に建物廻りの水脈を繋ぎ一晩寝かす事で翌日の空気の流れは一気に変わってくることでしょう。と一日が締めくくられました。

二日目、参加者より先に会場入りしましたが古民家の裏に廻ると谷間からの涼しく心地良い風を感じることができました。
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これが昨日、矢野さんが言っていた地下の空気が動くと地上の空気も動き出すということなのかと体感できました。それは、雨上がりの一日目と晴天の二日目の天候の問題なんじゃないの?!と疑う人もいましたが、でも、明らかに山から風が流れているのが体感できたのです。空気の流れが変わったのです。
矢野さんは何者なのか。空気も操れるのか?!ナウシカか(笑)とも思ってしまった。一日だけの参加の方にも感じて欲しかったところでもあります。

古民家の再生も建物本体だけをリフォームするのではなく、その周辺の空気の流れを改善することが大切だと思います。外回りの水脈改善をしながら建物の中にも空気を送り込み湿気などを吐き出しあげることで古民家は復活してくるのだと思います。

「焦らず、慌てず、ゆっくり、急ぐ」時間の制限がある中で急がなければならないこともあるけど、焦らないで慌てないで全体のバランスはゆっくりと見る。空気のような繫がりを持って作業を進めてほしい。という、矢野さんの言葉から二日目がスタートします。
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一日目の作業でパイプや枝葉を入れたところに埋め戻しの作業からになります。これも、ただ単に土を戻すという訳ではありません。
最後の表層の仕上げになるほどやさしいエネルギーで仕上げていくようにします。一年を通して雨風の動きがどのように環境を作っていくかを考える。強くエネルギーを掛けて土石流のような水の流れで地形を作ったことに対して、普段の雨風が仕上げをしていく細やかな日常的な雨風がしていくことを人が雨風になったつもりで、代行して仕上げていくようにします。
雨風がやっていることはムラがない。すべての空間に対してムラなくしている。それに習って雨風が少しずつ、波紋を広げながら均していくようにする。雨降って地固める姿は雨が通って空気や水が通りながら土圧と水圧で締めて安定させる。それに習って足で踏みながら水圧で押し込んでいるところに土砂を持っていくイメージで空気や水が抜けるところを残しつつ土を戻していきます。人が作業した埋め戻しはある程度ムラがあってもこの基本を守っていれば、本家本元の雨や風が修正してくれます。基本ができていないと雨や風がそれを壊して安定しようとしてくると言います。
基本が抑えられているかどうか確認しながら丁寧に気を掛けながら作業をする。時間も限りがあり、先を急がないといけないのだけど急ぐがあまり本質を忘れてはマイナスになることもある。「焦らず、慌てず、ゆっくり、急ぐ」この合言葉のような文句を思い出し全体のムラを調整しながら作業を進めていくようにします。
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気の動き一つでプラスでもマイナスにもなる。気を安定させれば持続もする。日常的に安定しながら気をかける訓練をすることが大切で、ここに住まいながら、日常気をかけて作業していけば、この空間は植物たちが応援してくれるようになってくる。
業者に頼めば力任せにしてしまう作業を悪くなったらみんなで気をつかう結い作業を行えば、気遣いと行動が繋がり心地よい空間が持続していくようになってくるといいます。

これは、大地の再生講座なのか、僕らの生き方を再生してくれているのか、分からなくなってきます。(笑)

レポート③に続きます。

レポート①はこちら

2016-07-26 | Taged in | Posted in ブログNo Comments » 

 

大地の再生講座 in 浜松天竜 レポート①

6月25、26日、矢野智則さんを講師に迎え『大地の再生講座 in 浜松天竜』を開催させて頂きました。全国を飛び回る矢野さんはじめ杜の園芸のスタッフの皆さん、忙しい中ありがとうございました。感謝いたします。
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造園、林業、農業、土木、建築関係者や自然教室を運営している方やWEBデザイナーやプロダクトデザイナー、デスクワークの業種の方など幅広い分野の方々、二日間で述100名近く集まり、関心の高さがうかがえました。築200年は経つという古民家もなんとかもちました。(笑)
直前まで雨が降っていましたが、講座が始まると不思議と雨は止み、いよいよ講座開始になります。
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このフィールドはかつては里山整備が出来ていた場所ですが、現代土木の道路開発、川の整備、などと合わせてここに人が住まなくなり放置されて、全体的に空気が滞ってきている。それを水脈を中心に地上部と地下部の風通しを良くし、空気と水が良く通る環境整備をしていきたい。始めから自然を相手にやることを決めるのではなくて、そこの自然や時間に合わせて直接向かい合いながらその場で即興で作業を進めていきたい。という矢野さんの言葉から大地の再生講座がスタートしました。

まずは、座学。
4つの環境分類と8つの環境ファクターを元に環境を見ていくことができます。
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地球環境はどのような分類でみていけるかというと、どこにいっても大地がありその大地の環境は骨格を作っている表層地質があり、その下には長い年月をかけて浸食や風化したり堆積したりできる土壌がある。この二つが基本的なものでこれが形を成してその場所場所のオリジナルな大地の形を成している地形がある。

環境の元になっている大地環境に2番の(生物環境)色んな動植物が生息している。その動植物とはちょっと異質な生活をしている人の生活相がある。

そして、次が矢野さんの講座の中でのポイントになってくると思います。
『気象環境』
地上部の空気と水が対流していく気象現象は大地の中にもあるということ。
雨が浸透し、土の中の土壌間隙の隙間は水だけなく空気も通っている。土の中の水の動きは空気と一緒に動いているということです。

それは矢野さんが現場で造園作業を通してわかってきたと言います。
土圧によって締め付けられいることで根の呼吸がしづらく苦しんでいる植物は、土の中の停滞している空気を抜いてあげれば中に溜まっている水も大気圧によって押し出されるように抜けてくる。空気と水の流れが改善されれば植物の根も呼吸しやすく元気になってきます。
空気圧を抜けば溜まっている水も湧出してくる。そういうのを見ていて土の中にも空気と水の対流があるというのが具体的に見えてきたと言います。

それは、山の斜面と尾根と谷から湧出していくる水の関係を見た時、植物の根が大地の中に張り巡らさせていてその隙間を大気圧のかかった空気が動き、そしてそれを追っかけるように雨の水が土の中に浸透し地形の落差によって空気が動き水が動き、谷へ綺麗な水が押し出されていくる。
今、気象庁がやっているのは地上の空気と水の流れのことだけですが、地下の中にも明らかに空気と水が流れている。血管のような脈となってそれは水脈となって川に流れている。地上の気象環境があるように地下にも気象環境があると言っていいのです。

表層地質、土壌と地形との3つの関係で地下の空気と水の動きが変わり、この3つの相互作用は大きく大地の気象環境を左右してくる。
大地環境と気象環境とがうまく相互作用をもたらしながら有機的な水と空気の流れを生みだされているところに動植物が呼吸できるよな環境を作り出している。
地下と地上の空気と水の循環、対流、動きが動植物の生活を決定的に裏付けていると言います。

こういう視点3つの大きな環境分類が動き続けているのは宇宙環境のエネルギーによって空気と水が対流し、地球の自転、月の引力などのエネルギーの相互作用によって地球の大きな3つの環境が動き続けている。これはミクロもマクロも同じように相似形のように繰り広げている。これが環境という世界である。

この4つの環境分類と8つの環境ファクターを元に現場を一つ一つ、大事に紐解くことで見ていくことでその場所のオリジナルを見れるようになれると思うので、参考にして欲しいと話してくれました。

そして、現代の人の生活環境は、地下の空気と水の流れがあるということを考えていない空間作りとなってしまっています。
道路はアスファルトなどで覆われ、建物基礎や土留めはコンクリート、川や水路は三面張りのコンクリートになり空気と水が通りづらい環境となってしまっています。かつてはコンクリートの代わりに石や土、木をなどの有機的な材料を使って結果的には空気と水が通る環境であったと言います。ここ50年で日本の素晴らしい風土を食いつぶしてきた。このままでは環境が悪化し災害という現象も起こり、人が住めない環境になってしまい、子や孫の世代に引き継ぐことはできない。と話してくれました。

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次に、古民家周りの環境を矢野さんと一緒に見て回りました。
この古民家と里山のフィールドの象徴的なところの一つがこの樹齢500年の杉と石垣です。
石垣と植物の根で立体的な組み合わせで土圧を支え、浸透してきた水も分散させたりして敷地を安定してくれています。
植物の根が石垣を崩さないで安定させるには空気と水が程よく循環していないと保たれない。
空気と水の循環を人工地形の中にも取り込んであげれば、植物の根が喧嘩しないでうまく保全し続けてくれる。
セメントを使わなくても土の中に空気と水が動く視点や技術があれば、何百年も保つことができる。それがここで証明してくれています。
先人の人たちの知恵はすごいものです。これは、日常の作業を通して何百年も伝えられた技術なのでしょう。

レポート②に続く

2016-07-22 | Taged in | Posted in ブログNo Comments »