雑木の庭を知る

これから雑木の庭を作りたいという方や、雑木の庭の魅力をより深く知りたい方のために、雑木の庭の基礎知識からさまざまな楽しみ方まで、写真とともに分かりやすく解説します。

雑木の庭とは

樹木の自然の姿を、暮らしの中に取り入れる

山にある樹木は、1本だけで単独で生きているではありません。さまざまな種類の樹木が寄せ合うように、そして伸び伸びと葉を広げている情景が、自然な姿なのです。その自然な姿を住宅の庭に取り入れ、心地良い住環境をつくることが、雑木の庭の最大の魅力です。雑木の庭をプランニングするときは、植栽を1本で見せることより、数本組み合わせることで、自然の森のように樹木が育つ環境を整えます。

四季折々や日々の変化を、楽しむことができる

人工的な構造物はいずれ劣化し、見栄えが衰えてきます。しかし、植栽は季節によって新緑や紅葉、花や実を楽しめます。朝と夕方でも、光や風の吹き方によって多様な風景を演出してくれます。四季折々だけでなく、日々の変化を感じながら楽しめることは、暮らしにとって大切なことだと思います。

暮らしを豊かにするのは、建物だけではない

家を建てるときに、建物のことばかり考えてしまい、外構のことは後回しになることがあると思います。たしかに家の中は生活する上で最も居ることが多い場所ですが、庭や外構も毎日触れる場所でもあります。庭をつくるというより「心地良い暮らし」をつくることが、雑木の庭の役割です。建物と庭を分けて考えるのではなく、雑木の庭を暮らしの一部としてとらえ、建物の計画と同時に庭や外構の計画を考えることが、豊かな暮らしにとって必要だと考えます。

自然とともに暮らす日本人の知恵

日本の平野部の住まいには、自然と調和しながら生きる先人の知恵「屋敷林」があります。この屋敷林は、冬には寒さをしのぐ防風林として、夏には太陽熱を直接地面に当てず木陰をつくり「涼しさ」をもたらします。おおらかな佇まいで、1年を通して過ごしやすい環境を自然とつくる役割を担っています。屋敷林の周りは水田で囲まれ、田植えの時期は水面も見え、稲穂を刈り取る頃には黄金色に染まります。屋敷林と水田とのコントラストは、日本が誇るべき美しい風景とも言えるでしょう。

夏の「涼」を雑木で楽しむ

やわらかな木陰で、地表を涼しく

空に向かって枝葉を広げる樹木は、日差しをさえぎり、木陰をつくってくれます。そうすることで、人にとって心地良いだけなく、地表が熱くなるのも防いでくれるのです。たとえば、直射日光に照らされたアスファルトは、熱を蓄積して街全体の温度を上げてしまいます。住まいの周りに雑木の庭をつくることは、地表を涼しく保ち、涼しい夏をもたらしてくれます。

木陰の風が涼しくなる空気循環

夏の暑い日に、大きな木の下で涼風を感じたことはありませんか。実は、陰だから涼しく感じるのではなく、実際に「風の温度」が低いのです。風の流れは、温度差の影響を受けて循環します。樹木の日陰に上空の冷えた空気が降りてきて、温度の高い日なた側に抜けていきます。そして、また空に上がっていきます。つまり、空気の循環によって、木陰には常にひんやりとした風が吹き抜けるのです。

葉からの蒸発による気化熱の発散

夏になると、樹木は自らの体温が上昇しすぎないように、たくさんの水を葉から蒸発させます。根から吸収した水分を蒸発させることで、樹木の温度を下げるだけでなく、周りの熱を逃がしてくれます。こうした自然の知恵は、人間にも恩恵をもたらせてくれるのです。

庭をセカンドリビングに

屋外もひとつのリビングになる

「間取り」という言葉を聞くと、ほとんどの方は建物内のことを思い浮かべるのではないでしょうか。たしかに屋内における間取りを考えることが一般的ですが、ウッドデッキやテラスをうまく設計することで、屋外もリビングになり得るのです。しかも木々のそよぐ音や光の陰影などを楽しめる、雑木のリビング。庭を自然豊かなひとつの部屋として考えれば、発想は広がるのです。夏は直射日光を浴びて高温になってしまい、外に出られないウッドデッキではなく、高木を植えることでウッドデッキに木陰をつくり温度上昇を抑えてくれて、生活スペースが広がります。

自然を感じて、ゆったりとできる空間に

夏の暑い日に、大きな木の下で涼風を感じたことはありませんか。実は、陰だから涼しく感じるのではなく、実際に「風の温度」が低いのです。風の流れは、温度差の影響を受けて循環します。樹木の日陰に上空の冷えた空気が降りてきて、温度の高い日なた側に抜けていきます。そして、また空に上がっていきます。つまり、空気の循環によって、木陰には常にひんやりとした風が吹き抜けるのです。

二階から楽しむ雑木の庭

二階からも自然豊かな風景を

雑木の庭を楽しめるのは、一階からだけではありません。家際に高木を植えることで、ニ階からは枝葉が揺れるのを感じたり、小鳥が羽を休めにくるのを眺めたりもできるのです。どの部屋にいても緑を感じられることが、快適な住環境に不可欠な要素だと考えています。ニ階からの景色も含めて家全体で緑を楽しめるような設計を心がけ、一階の窓だけでなく、ニ階の窓の位置を確認しながら植え付けていきます。

室内での生活を快適にする高木

二階まで伸びる樹木は、二階での生活にも良い影響を与えます。コンクリートやウッドデッキから生まれる照り返しや輻射熱が、室内に影響を及ぼすのを防いでくれるのです。家際に高木があることで木陰をつくり、ウッドデッキなどの熱を和らげてくれて、深い軒先の役割も担います。夏には壁面に対しても木陰をつくることで、室内の温度上昇を抑制してくれるのです。

雑木の庭の維持管理

寄せて植えることで、維持管理がしやすくなる

樹木は幹肌と地面が暖まるのを嫌います。1本だけで植えつけると限られた陰しかできませんが、寄せて植えることで、お互いが陰をつくり守りあうことができるのです。単独で植えると、樹木は幹肌や地面に熱を当てないように枝葉を広げます。成長が早くなり、人にとって、伸びる枝葉は邪魔に感じてしまうこともあるでしょう。雑木の庭で、たくさんの樹木を管理するのが大変になるわけではなく、1本で植えるよりゆっくりと健康に育ってくれるので、枝葉の剪定や病害虫の管理は返っては楽になるのです。

雑草も下草として楽しめる庭づくり

庭の管理において、最も頭を悩ませるのが「雑草」ではないでしょうか。雑草といわれる草の中には、海外からの帰化植物と呼ばれるものが多く、日なたを好んで生殖します。日本の森のような自然生態は木陰を多くつくるため、それらは生息しがたい環境なのです。雑木の庭では、旺盛に伸長する雑草に悩まさせるのではなく、おとなしく生育する雑草も「下草」として景観に取り入れるような庭づくりを目指します。

自然環境に近いからこそ、手入れが楽になる

自然環境に近い環境では、害虫や雑草の繁殖を抑制する仕組みが働いています。また、自然な水の流れを作り出し、水の管理を容易にします。これは、山の自然環境において、土壌や地形が雨水を蓄え、ゆっくりと地下に浸透させる仕組みが存在しているからです。落ち葉にも役割があり、落ち葉が分解されて土壌に栄養を与えることで、豊かな植生を育むことができるのです。