密植
雑木の庭の植栽の仕方 浜松モール街『Any エニィ』を通して・・・2
前回の続きです。
植栽する前の大切な水脈通気改善と土壌改良を行い、やっと植栽に移れます。工事関係者からは今回の植栽期間は2、3日で終わるでしょう〜と言われていましたが、ここまででその日数は掛かっています。工程管理にはご迷惑を御掛けしましたが今後の樹木のためにも大切な部分でしたので工期厳しい中でも施工させて頂きました。ご理解頂き感謝しております。
植栽に移るのですが、先に述べたように樹木がただ単にあるのでは緑の効果が発揮されません。近頃では庭や外構でも雑木を扱われることが多くなってきました。人気樹種ではアオダモやモミジやカエデなどがありますが、それは山採り風の樹形で軟らかく風に靡き心地良く感じたりもします。また、成長がほとんどしなく管理が楽だという理由で選ばれているのもあると思います。しかし、それは成長しないのではなく、成長できない環境なのではないでしょうか?植付けた時は見た目は良いけれど段々と頭枯れしたり幹肌が痛んだり、いずれは枯れてしまったりとすることはないでしょうか?
そうならないように、植付けた時が完成ではなくその後、庭全体として成長できるようにしていかなければなりません。管理も現状の形を維持するのではなく樹々が健康に成長していけるような手助けをし、人と樹々が共存できるような管理が大切だと思っております。
では、今回の植付けの仕方をご説明します。
密植、階層的に
なるべく自然の植生を庭にも持ってくることを心掛けています。まずは、健全な森林はどんな植生なのか考えることが大切になります。
写真は、軽井沢の雑木林です。ぼくら人間が心地良く感じるのはこのような落葉高木が優占種の雑木林だと思います。写真を見ると樹々は密集して上下の空間を分け合い高木から中木、低木、林床植物と空間を上手に住み分けて立体的に形成されています。このように現場で植栽する時も同じ様に密植して階層的に高木から中低木、下草と空間を分け合いながら植付けることが大切だと思います。木は人間と同じで1本では生きられません。自然の雑木林を見ても木は1本だけではありませんね。木を1本で植付けるとどうなるかと言うと、幹肌に直射日光や地面からの照り返しで幹は温められ乾燥し幹から水分を奪い痛んでしまいます。水分や栄養分が上部まで上げれずに頭から枯れ始めてしまうこともあります。ですから、木を1本で植えるのではなく群落単位でお互い強い日射しや風などから守り合うように密植して階層的に空間を分け合うように植栽することが大切になってきます。
樹種の選択
植生遷移でコナラやクヌギが優占している時の雑木林をモデルに樹種を選択します。庭でもコナラを主木として計画していきます。今までの庭ではコナラは大きくなるからと言われ使われることは少なかったと思いますが、コナラは庭を造る上で大切な樹種の一つです。コナラとモミジの根系図を見てみます。
コナラは根を深く伸ばす樹種です。根を深く伸ばし土中の水脈を改善し土を健全な状態を造ってくれます。またコナラは陽樹で日射しに強く上部で枝葉を広げてくれればその下のモミジなどの中木類は日射しを緩和され雑木林にあるような軟らかい枝振りになってくれます。山採り風の軟らかい樹形や欲しい樹種だけで庭を構成すると最初は良く見えるもののいずれ枝振りは硬くなってしまいます。最初だけでなく月日が経っても自然な軟らかい姿が維持できるような樹種の選択と組合せが大切だと思います。また、地面からの熱の照り返しによって痛むことがあるので低木にも日射しなどにも強いシャリンバイやトベラなども用いるようにしていきます。あとは、廻りの構造物や方位をみながら決めていきます。
落葉でマルチング
今回の表面の仕上げは黒土を敷き均し叩いて仕上げることもやりますが、落葉で敷き均しました。
落葉を敷き均すことで見た目が一気に自然の山の雰囲気になります。街中に居て自然の山の中にいる感じになれると思います。また、落葉をマルチングすることで雑草を抑制したり乾燥防止にもなります。
写真は伊豆の天城山の山道です。健全な雑木林には斜面がきつくても落葉が堆積しています。
落葉をめくるとフカフカの土がみえます。ここでもこのようにいずれ肥沃な土へと戻り樹々を健康に成長するための手助けをしてくれないかと願いを込めて敷き均しています。拾ってきた落葉には細かい枝も混じりそれが通気を良くし小動物や微生物の絶好の住処にもなってくれることでしょう。落葉は命の源と言っても過言ではありません。決して落葉はゴミではありません。大切な資源の一つです。
ナインスケッチの植栽方法は見た目を優先して植付けるのではなく樹々が健康に生息していくことを目標に森林植生に習って植栽するようにしております。木が健康に育てば必然に我々人間に心地良い空間を与えてくれることでしょう。そして、鑑賞としての庭でなく緑の力を生かして心地良い住まいを外廻りから考えご提案出来ればと思います。
最後に浜松の街中モール街『Any エニィ』の完成写真を何枚かご覧下さい。
浜名湖花博『雑木の庭と共に暮らす』〜解体工事〜
先日、浜名湖花博に出展した庭の解体工事が完了となりました。解体工事というより撤去と言った方がいいかもしれません。今回は出展前から最後は更地返しすることが決まっていたので材料は全て再利用できる素材で計画しています。
まずは、低木・下草類やコケの撤去です。手作業で丁寧にポットに移します。
次に重機を併用して樹木の撤去です。樹々を寄せて密植しているので近いところは手作業になります。
春に植えた樹木はこんなにも細根を出していました。樹木の力はすごいですね。植栽の際に支柱をしない理由がこの写真でも分かると思います。密植し支柱をしないのはいずれお互いの根が絡み合い一つの木立としてびくともしなくなります。支柱をしない分、樹は風に揺れます。揺れることで倒れないために自ら根を張ろうとしてくるのです。また、津波対策で宮脇昭先生が推奨する『緑の防波堤』が有力だと思うのです。自然の力、根の力は強いのです。
住まいに見立てて建てた小屋はエフベースさんが引取りに来てくれました。
アプローチと小屋前の作業スペースに使用した舗装の三和土仕上げは砕いて土に戻します。雨が降れば水を吸ってくれます。夏場には水を打てばそれが蒸散して自然冷却として効果を発揮してくれます。本当に優れたものだと思います。タイルやコンクリート二次製品などお金を出せば良いものができる訳ではありませんね。快適な過ごしやすい住まいの空間を考えての素材選びが大切だと思います。
整地して終了です。
花博で使用した樹木、写真の用に新しい現場で息を吹き返しています。現在雑木の庭を施工中です。新しい雑木の庭もまたの機会で紹介させて頂きます。
浜松市中区で雑木の庭工事中
浜松市中区での雑木の庭工事が終盤を迎えてきました。まだまだ、自分の中で課題はありますが、見た目や雰囲気だけでなく住環境にも影響を与えられるように考えたつもりです。家際には6m程度の高木の木立を作りました。夏場の太陽の南中高度は78度にもなります。6m程度の樹木を植えても1mちょっとしか木陰ができないのです。だから、家際に高木が必要なのです。樹木が根付き枝葉が広がる年月はかかると思いますが、木陰がウッドデッキに落ちてくれ夏でも心地良くウッドデッキで過ごせるようになってくると思います。家際に高木を植える際には1階だけでなく2階の窓の位置も気にしながら、2階にいても緑が感じられるように配置を決めています。鳥のさえずりや風に揺られる葉音も身近で感じられるようになることでしょう。
そして、樹木は1本で植えるのでなく何本かまとめて密植で植えます。樹木は熱に弱く太陽光を遮るために枝葉を広げます。1本で植えていると幹肌や地面に太陽光があたりやすく枝葉を広げたり胴吹が起こり樹形は人工的な形になりがちです。そのために密植しお互いが守り合うような環境を作ってあげれば、自然の山のような環境になり木々が1本で成長するというよりは庭全体で成長していってくれるようになり健康的で管理のしやすい庭に育ってくれます。
落葉高木の下には常緑樹を配置します。落葉樹だけだと冬の風景は寂しく感じられ、常緑樹は冬の庭に潤いを与えてくれます。自分の今までの庭作りには常緑樹が少なすぎました。それを最近気付きました。(今までは見た目重視の庭作りだったように感じます。)そして、以前訪れた伊勢神宮の参道脇の雑木林や裏千家今日庵の前庭にはきれいな常緑樹がありました。庭には常緑樹も必要なんですね。二次林では落葉高木の下で弱い光の元でゆっくりと成長をしています。それに習って落葉高木の元に常緑樹を配置すれば落葉高木の木陰でゆっくりと軟らかく成長してくれる思います。常緑樹のボテっとした樹形が好きでなく中々使うことができませんでした。それも1本で見せようとしていたのだと思います。庭全体のことを考えなければならなったのだと反省しています。
来週でこの雑木の庭も完成となります。来月には4月から開催される浜名湖花博10周年記念事業の庭つくりがあります。
まだまだ、勉強しないといけないことが山積みです。樹木の供給の問題もあります。日々、努力し勉強し、庭・外構エクステリアから住まいを提案していきたいと思います。